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北の涯のイカ釣り

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渓流シーズンが終わってやることのない無聊の日々を重ねていたが、約一年ぶりに『みちのく』にイカを釣りに行った。

10月下旬の東北道は冷えていた。峠の上では気温3度を指している所もあった。夜小雨が降っており、車通りが少ないと路面凍結もあるのではないか、と警戒心が湧き上がってくる。暗闇で野生動物と衝突する心配より、一気に冬の凍結の不安の方が大きくなっていた。


SAで仮眠して目的の堤防に到着したのは午後1時を廻っていた。

みちのくの曇り空の海を吹き渡る風はジャケット一枚では耐え難いほどに冷たく、一ヶ月前まで汗をかきながら岩手で渓流釣りをしていた事が信じられないぐらい急激に冬らしくなっていた。

それでも堤防の先端には先客のエギンガーが三人陣取っていた。

この堤防は先端でしか釣れないので、しまったと思ったのだが、釣れなければそのうち帰るだろうと思って、先端の50メートル手前で釣りを開始した。


いつもそうだが、久しぶりに餌木をキャストするとしっくり来ない。フライキャストは年中しっくり来ないが、割と出来ていたルアーキャストが下手になっているとは、私の釣り人生はいいところがない。

テンプラ気味の気の抜けたキャストを繰り返していると、半時間後、餌木に重みが乗った。

「嘘やろ」と一番信じられないのは自分自身だった。

上がってきてのは200グラム位のアオリイカだった。一年ぶりのエギングでの釣果だった。

ラッキー過ぎて、素直に喜べなかった。100%向こうから勝手に釣れてきた結果だったからである。


その後、小一時間餌木を投げ続けたが、ラッキーは再現しなかった。

寒すぎるので、スボンを裏毛のある冬物に履き替えるべく、一旦自動車に撤退した。

再び堤防に戻ると先端に陣取っていた二人組の片方が帰った。恥ずかしかったのだが、隣に入れて欲しいと声を掛けて、念願の堤防先端に立った。

風は背後から吹きつけているが、追い風なので問題なかった。


念願の先端部でキャストを開始したが、思ったほどイカの反応は芳しくなかった。

隣の三十代らしき兄ちゃんと釣りに関する当たり障りのない話をしていた。兄ちゃんは津軽の人で、若いのだが話している会話の結部の単語(または動詞)は聞き取れなかった。そんな時はあやふやな返事をして誤魔化していた。

突然、海中の餌木が重くなった。

海藻を引っ掛けた時より明らかに重い。

穂先が引き込まれる。

鋭く合わせを入れたが、2秒足らずでかんぬきから重みが抜けた。

時刻は午後5時。兄ちゃんに挨拶して堤防を後にした。


翌朝も同じ堤防に入った。すでに先端には一人入っていたので、手前の場所で釣りを開始した。なかなか反応は得られず、一時間ほど投げてやっと反応があり、フッキングしたがあっさりと重みは抜けた。

餌木を上げてくるとカンヌキに千切れた触腕が付いていた。イカはいたが、合わせが強過ぎたようだ。

この堤防ではここまでとして次のポイントに向かった。

次に入った堤防は、この地域でも一番人気の場所で、私が入った時には既に6名ほどエギンガーが居た。

やれそうな場所はどこも空いておらず、唯一テトラポットの上まで行けば釣り座はあったのだが、大きなテトラポットなので転落が恐ろしくて行けなかった。

あまり望みの無さそうな所で30分ほど餌木を投げたが、やはり反応は見られなかった。

ただ、私がキャストをしている間にも前方で釣っているエギンガーはアオリイカを二杯上げていた。この堤防付近は朝方の堤防よりアオリイカが沢山入っているようだった。

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その後、車で100キロほど移動した。その一帯もイカが釣れることで有名な地域だった。

以前は入る場所がよく分からなかったのだが、今回は事前に港の名前を確認してから入った。

外側の堤防の先端には先行者が二人いて餌木をしゃくっていたので、私は誰もいない内側の堤防に入った。

コンクリートの上には墨跡が残っていた。たが、先ほどまでやっていた場所とは比較にならない数の少なさだった。

結局、内側の堤防では反応は得られず、外側の堤防に乗っていたエギンガー達が帰ったタイミングで、そちらのほうに移動した。

そちらの堤防の先端は真っ黒になる位イカの墨がついていた。この港では、こちら側の堤防が本場のようだった。

風が吹き、うねりのような波が立っている沖に向かって、餌木を投げ続けたが反応がない。

周りには釣れている証拠がたくさんあるにもかかわらず反応得られないので、この場所では夜にならないと反応が得られないのかもしれない、と思いながら港の内側の足場の低い方に戻って、風が当たらない場所で餌木を投げた。

ここでいきなり重みが乗った。先ほどまで散々海藻を引っ掛けて、あたりと勘違いしていたので、これもまた海藻か、と思ったのだが、少し引っ張り上げてみるとイカの抵抗する感触がロッドから伝わってきた。

全く予想していなかったので、あたふたとイカを堤防に上げてみると、昨日釣ったのと同じ位の大きさだった。

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この一杯をもってこの堤防での釣りを終えた。

『みちのく』は確かにこのシーズン、イカがよく釣れているのだが、私の腕前ではそれほどチャンスは無かった。ただ、一日1匹づつでも釣れたことで満足することが出来た。

ちなみに翌日は完全坊主を喰らった。

こうして往復1600キロメートルを自走した『みちのく』のエギング遠征は終わった。

202510



# by rororon3rd | 2025-11-03 19:00 | エギング | Comments(0)

盛期の堰堤

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6月の盛期なのに釣果は思ったほど伸びず、新規の川に挑戦してはボウズを喰らったりしていた。

この頃は釣れない日が重なっていたので結構参っていた。日頃同じ場所で釣るのは好みじゃない、と偉そうに語っていたが、釣れる川に行きたくて仕方ない心持だった。

結局、この日訪れたのは過去に実績がある川だった。今シーズンも既に一度訪れており、その時はぼちぼち釣れていた。

今回は前回釣った区間からその上の堰堤までを釣り上る事にした。

前回は瀬の中から魚の反応がよく出ていたので、この日もそのパターンかと思って、瀬を中心に撃っていくが、ほとんど反応はない。

30分ほどしてやっと瀬の中からイワナが釣れた。16センチほどの小さいヤツだった。このぐらいのサイズなら連発してほしいところだが、そうはいかず、またしばらく釣れない時間が続いた。

大きな淵の脇で水流が巻いている部分があったので、これは釣れそうだと思って投げてみると予想通りイワナが出た。

案外このパターンは良さそうだと思っても、このような巻きに着いている魚は、最近ではよく狙われていて、あまり釣れた覚えがないのだが、この川ではそこまで深刻なフィッシングプレッシャーはかかっていないようだ、と早合点した。

しかし、それ以降の似たようなポイントの巻きからは反応がなかった。最初に釣れた場所はたまたまラッキーなだけだったようだ。

6月の日差しは強さを増していて、午前10時を廻った頃には汗ばむほどの暑さになっていた。


限界集落の上流にあるこのポイントでは、釣り人以外、人に会う事はまずないのだが、この日は釣り人にも会わなかった。

特に魚が居そうなポイントの上には蜘蛛の巣が張っており、蜘蛛の巣を撤去してからでないと釣りが出来ないような状況が多かった。

このぐらい蜘蛛の巣が張っているのだから、訪れる釣り人は少ないので魚は釣れるのではないか、という淡い期待は叶わなかった。

良い流れから魚の反応がないとだんだん気分が滅入ってくるものである。この時もほとんど釣りを止めそうになっていた。しかし、半時間ほどすると、また1匹イワナが釣れた。

いつもはヤマメがもっと出るのだが、今日はヤマメの反応が悪い。

ヤマメは活発な魚種なので、すでに釣り人によって抜かれてしまった後なのかもしれない。


初心に帰って前回引き返した場所から先に見えていた堰堤までは行こう、と遡行を続ける。

堰堤の200メートル手前まで来るとクモの巣がいっそう激しく張っていた。

ここからは下の流域よりさらに釣り人が立ち入らないようだ。

堰堤下の落ち込みの淵は、大物が釣れるイメージもある。反面、釣り人がよく入る谷では、そういったポイントは逆にプレッシャーが高く、魚の反応得られないことの方が多い。釣り人なら、誰でも知っている話だが、それでも堰堤下を狙うのは、稀に良い魚が釣れることがあるからだ。

堰堤までの直線部には深瀬が続く好ポイントが連続していた。

これはと思う流れの中で良型の魚が反応してきた。一つ前のポイントでバラしていたので、この時は当たりをよく見て合わせをきっちり入れた。

ヤマメらしき魚は良い引きでラインに力がかかったが、2秒後には鉤は再び外れていた。どうにも原因が分からない。かかりが浅かったとしか言いようがなかった。

この日最大のチャンスを不意にした。


疲れた足を引きずりながら、堰堤下に至った。

堰堤下の淵からの流れ出しに良型の魚がいたが、不用意に近づいたせいで、すぐ淵の中に逃げてしまった。

これはもうダメだ、と半ば以上諦めていたが、力なく投げたフライが淵の中ほどに落ちると魚が喰ってきた。18センチほどのヤマメだった。

今日初めて見るヤマメだった。ヤマメはこんな場所に隠れていたのだ。

ヤマメをリリースして、さらに淵の左側の脇を狙うと、深みから8尺はありそうなイワナが顔を出した。しかし、しばらくフライを眺めた後、イワナは再び深みへと沈んだ。それで最後だった。その後は何も反応がなかった。

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6月頭のハイシーズン。人影ない独占出来た釣り場で、思ったほど釣果が上げられなかったのは悔しかったが、誰もいない秘密のポイントのような空間で釣りをした事は、いつもと違った楽しみを与えてくれた。

帰り道、限界集落を通り抜けながら、山里に人は住まないが、越後の川はどこへ行っても釣り人が多くて魚はスレているものだ、と一抹の皮肉を感じた。

202506



# by rororon3rd | 2025-10-27 20:22 | トラウト釣行(関東地方) | Comments(0)

帰りたい風景の釣り

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釣りをしていて普段味わえないような心地良い気分になることがある。それは何も大釣りしたり、釣ったことがないような大物を釣り上げた時ばかりではない。魚が全く釣れていないのになるということは統計的にないのだが、あまり釣れていなくても非常に心地よい、爽やかな気持ちになることがある。

深い山の中で一人だけで釣りをしていて、美しい鳥の鳴き声が聴こえてきたり、木々の枝が新緑に輝いていたり、と状況はいろいろなのだが、私の場合人里で釣りをしている時にそのような感覚になることが多々ある。

川原から集落の生活が伺えた瞬間、不意に訪れる心象である。

今風の言葉で言えば『エモい』だろうか。

何か懐かしいような、もの悲しいような、それでいて安心感に包まれているような気分に近い。

これも釣りをしているからこそ味わえるのだと思う。

そもそも川に入るのに釣竿も持たず入るような事をすれば、周りの住人から不審者のように扱われて、居た堪れない気持ちになってしまうだろう。だけど、釣竿さえ持っていれば、川の中でならどのようなところに行っても許される感覚がある。

山に行く時はリュックを担ぎ、旅をする時はカメラを肩に掛ける。同じように、川や海辺をただ散策したいだけでも、釣竿を携えて行くというのが正しい作法だろう。


午前中に枝川で釣りをした後に本流に入った。

この本流のもっと上流側の山中では割合釣れたことがあるのだが、人里近くのパートではあまり釣れたことがない。

ただ、全く釣れないというのではなくて、魚は多く棲んでいるのだが、釣り人が多いので魚がスレてるといった感じである。

この日も釣り始めてすぐに魚がスレていることが分かった。

魚影は見えているのだが、一回のフォルスキャストでフライラインに驚いて逃げたり、ドライフライが目の前を流れても全く反応してこない。

かなりフライマンにいじめられているのだろう、と思われた。

それでも釣り続けていれば、何匹かは釣れるはずなので継続していると、30分後にやっと15センチ位の小さなヤマメが釣れた。

型はもの足りないが、魚の姿を見れた事で安心した。おそらく放流魚だろうが、ここのヤマメは色も形も整っていて、非常に美しい。

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少し安堵したところで釣りを再開する。

このような時、釣り人は概ね次もまた直ぐに釣れるだろう、と思い込んでいるものだが、往々にしてその期待は裏切られる。今回もそうであった。

直ぐに魚は釣れず、しばらく釣れないまま釣り上がった。

途中には、大きな淵や小さな滝ほどの落ち込みがあったのだが、そこいる魚も私がちょっと近づいただけで、そそくさと逃げ去った。

なかなか上手くいかない。

大場所を越えて、しばらくすると、集落の裏手の流域に入った。

いかにも魚が溜まりそうな深瀬が三つ並んでいた。

一つ目と二つ目からは反応がなく、三つ目で小さな当たりがあった。

ここまでフックオフを連発して、何としても釣りたいと集中していたので、いつもは見逃すようなあたりを今回は捉えることが出来た。

この魚はなかなか引きが強い。間違いなく今日一の魚であると確信した。

釣り上げてみると24、5センチのヤマメだった。長さはそこそこだったが、かなり幅広で野生味のあるヤマメだった。

これでかなり気を良くして、さらに釣り上がった。


落ち込みからの大きな淵があり、釣れそうな感じがしたのだが、一度ミスバイトがあった後、魚の反応は続かなかった。

しばらく粘っていると落ち込みの付近から何やら変な水紋を立てて、モノが流れてきた。もがくように忙しなく蠢いており、蛇がとぐろを巻きながら流れてきたのかと思って、立ち尽くしていたのだが、よくよく観察してみると、2匹のネズミが絡まり合いながら流れていた。

じゃれ合っているうちに川に落ちたのか、と思ったのだが、眺めていると、その2匹のネズミは、途中から鮮やかに水中を素早く泳いで下流に去って行った。

川ネズミであろう。私は川ネズミという名称は知っていたが、実物を見るのは初めてだった。このことだけでもこの川がいかに自然を残した良い川なのかが分かる。


集落の裏手を行くと、大きく崩れた崖があった。崩れた土砂によって、川床が埋まり流れは平坦になり、あまり良いポイントには見えなかった。しかし、不思議と小型のヤマメが連続して釣れた。

まだ人が住んでいそうな家屋の裏手を通りながら渓魚を釣っていると、なんだか人里離れた大自然の中で釣っている時以上の楽しさがこみ上げてきた。

7月頭の昼下がり、人影のない家の裏の川で、魚を釣っている。

鳥と瀬の音以外何も聞こえない。

魚はまばらに釣れてくる。

ありそうで、なかなかないシチュエーションだった。

梅雨の合間の青空はどこまでも高く、風は弱く吹いていた。

視線の先に魚のライズが見える。

ある日の午後のひと時、許された特別な空間だった。

たまたま、そこに釣り竿持って行き合わせた私は幸運だったのだろう。

このような偶然の巡り合わせに出会う事は一年のうちでもそんなにない。今日のこの釣りを経験した事で、今シーズンがこの先どうなろうと、満足してシーズンを終えることが出来るだろうな、と確信した。

たった半日でいいので、このような美しい光景の中で釣りがしたいと願っていた釣行だった。

(202507)




# by rororon3rd | 2025-10-20 22:19 | トラウト釣行(東北地方) | Comments(0)

笹濁りとフックアウト

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昨夜の雨によって山の沢は少し増水していた。

濁りも薄く入っていて、笹濁りのほどよい水が流れていた。

これは大釣りの前兆だ、と思った。ただ、この沢はもともと魚影が濃く、魚の反応も多いところである。そんなところに、この僅かな濁りが入ったことで、どれ程のバフが掛かるのか、予想できなかった。

期待しつつ、不安を抱きつつ釣りを開始すると、思ったより大場所での反応は薄かった。

ただ、それ以外の場所では魚の『当たり』が連発する。やはり魚は増水によって、活性が上がっているようだった。

もともと川の流れがあった場所のやや深みのあるポイントに魚は居るのだろうが、そこの魚が反応する事は少なかった。

反面、いつもは水が流れていないようなところにそこそこの魚が入っていた。ただし、大物は皆無である。20センチ前後を頭に小さいものは10センチほどのヤマメが多かった。

イワナは偶に出るが、鉤外れするのはイワナの方が多い気がした。川の水量が増えることによって流速が上がり、イワナがフライを咥え損ねているのかもしれない。


5回のバイトに1回キャッチ出来る割合で、川を遡行した。

川に沿って県道が通っているが、川から見上げる釣り場の風景は美しかった。

照葉樹が川岸の両側に生えており、空は枝葉でほとんど隠されていた。7月初旬のまだ若い葉は、太陽の光を通しており、陽が陰らなければ緑のライトが照らすドームの中を釣っているような感じであった。

道路の真下で釣りをしているのだが、喧騒はなく、まるっきり自然の中で釣っているのと変わらない。

また、ある程度車通りもあるので、熊等の野生の獣が現れる心配もなかった。安心して釣りができる来やすい川だった。

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ただ、私の心持ちは景色とは関係なく、それほど心安らかだったわけではない。

釣りが続くにつれ、バラしが増えると、だんだんと不満が溜まっていった。

キャストが荒くなり、フライラインが水面を叩く。それがまた水深のある深場に潜んでいる大物の警戒心を高める結果になったようだ。

大きな魚はほとんどバイトしてこない。

3時間は釣り上がっただろう。途中1時間弱、釣れない時間もあったが、思うほどキャッチ出来ず、疲労もしたので退渓を決意した。

すると最後のポイントで連続して3匹釣れた。

本来ならそれで満足して釣りを終えられるはずだったのだが、一番最後のポイントで、また毛鉤に出た良型の魚を掛け損ねた。

沸々した思いは絶えることなく、正午頃、釣りを終えた。

いつも気持ちよく釣りを終えるわけではないのだが、このように内心イライラしたまま釣りを終えるというのも、考えようによれば悪くないのかも知れない。

まだ、私の中にはそれだけ釣りに対して熱い思いがあり、この熱病が続く限り、釣りを本気で続けることが出来るということなのだから。

帰りがけ入渓地点の川を覗くと、すっかり濁りは取れていつも通りの透明な流れに戻っていた。

202507



# by rororon3rd | 2025-10-13 21:35 | トラウト釣行(東北地方) | Comments(0)

廃集落へ続く川

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二週間程前、釣りを終えて脱いだウェーダーを乾かしていると、上流から軽バンが下りてきた。

私が釣りを終えて川から上がり、戻って来る途中では見かけなかった車だった。私が釣った流域より上流から来たのだろう。

川沿いの林道は今駐車している場所から300メートル先で、鎖と錠前で封鎖されており、山仕事か工事関係者しか進入する事は出来ないはずだった。

釣れたか、と訊いてきた車の爺さんは年の頃は七十前後で、痩せてはいたが壮健な感じがした。

大して釣れなかった、と答えると、昔は一杯魚がいたんだ(この言葉で爺さんが釣り人ではないことが知れた)、と懐かしそうに語りだした。

話を聴くとこの爺さんは山仕事や工事関係者ではなく、昔この川の上流にあった集落の出身者とのことであった。

行ったことはなかったが、地図によれば4、5キロ先に谷が少し開けた所があり、昔は集落があったのだろう。しかし、今は国土地理院の地図にも建物跡の記載が無いため、廃村になったのは半世紀以上前だろう。

爺さんの子供の頃の話を聞きながら、自分自身の子供の頃を思い返した。

ここほど山の中ではなかったが、川にまつわる思い出には大した差はない。川に棲む魚がイワナか、フナかの違いくらいだ。

爺さんは定期的にここを訪れているようだった。今も廃集落の周りに先祖伝来の山林や田畑があるのかも知れない。


今回は爺さんの語っていた故郷の集落跡近くまで釣り上がった。

川は細くなったり、広くなったりを繰り返しながら続いており、ボサはあるもののフライフィッシングは可能だった。

魚の出はソコソコで、爆釣とは行かないが、ポツポツと釣れ続いた。

釣り人は多くないまでも一定数入っているようだった。

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釣りを終えて林道に上ると、以前より整備されて、車も通りやすそうになっていた。

林業のために整理しているのだろう。ただ、この先に思い出のある人々に報いるために整備されているとも思えた。

そのような気遣いがあるような気がして、心が少し軽くなった。

人知れず谷筋に残る人々の想いの残照を見た気がした。

(202506)


# by rororon3rd | 2025-10-06 20:46 | トラウト釣行(関東地方) | Comments(0)